カナダに関することをランダムかつ不定期に書きます。政治とか歴史とか。

Saturday, December 28, 2013

カナダにおける"from coast to coast to coast"という表現

カナダの国章(Wikipediaから拝借)
1921年にデザインされた現行のカナダ国章にも書かれている、ラテン語の"A Mari usque ad Mare"という表現は、"from sea to sea"又は"from coast to coast"(海から海へ)を意味します。これはカナダが大西洋から太平洋に東西にまたがっているという意味が込められていて、カナダ人のボキャブラリーに慣れた人にとっては、"from coast to coast"という表現はとくに違和感なく耳に入ってきます。

しかし、近年になって、北極圏をめぐる各国の権益争いの顕在化を背景に、カナダの国土が北極海にも及んでいることを明示するために、もうひとつ"to coast"を追加して、"from coast to coast to coast"又は"from sea to sea to sea"という表現が特にカナダの政治家によって多用されるようになりました。カナダ政府がこの表現を用いるときには、北極圏におけるカナダのプレゼンス(存在感)を対外的に示す効果のみならず、国内的には、北極圏に暮らす先住民(イヌイット)への配慮を忘れていないというメッセージを込めていると言われています。

その一例が、今年のスティーブン・ハーパー首相によるクリスマス・メッセージです。最後の部分を引用します。

Friends, as Canadians from coast to coast to coast prepare for this joyous season, I want to wish you and your loved ones a safe and happy holiday, a very Merry Christmas, a Happy Chanukah and a prosperous New Year.
http://www.pm.gc.ca/eng/news/2013/12/23/christmas-greetings-prime-minister 
この"A Mari usque ad Mare"という表現の典拠は旧約聖書「詩篇」第72篇であり、"Et dominabitur a mari usque ad mare, et a flumine usque ad terminos terrae (He shall have dominion also from sea to sea, and from the river unto the ends of the earth)."が全文です。日本語では「彼は海から海まで治め、川から地のはてまで治めるように。」と訳されるようです。

また、この「詩篇」第72篇の表現は、1867年7月1日にコンフェデレーション(連邦化)を遂げた新生国家カナダが「ドミニオン・オブ・カナダ(Dominion of Canada)」という名前で始まったことにも深く関連します。連邦結成にあたって、Fathers of Confederationと呼ばれたカナダ人たちは「カナダ王国(Kingdom of Canada)」を新しい国にふさわしい呼称であると信じたようですが、英国からの反対、そして米国への配慮により「ドミニオン」に落ち着いたという経緯があります。


(参考ウェブサイトURL)
"A Mari usque ad Mare"について

http://www.thecanadianencyclopedia.com/en/article/a-mari-usque-ad-mare/
http://www.noslangues-ourlanguages.gc.ca/bien-well/fra-eng/vocabulaire-vocabulary/mariusque-eng.html

(追記)カナダのもうひとつの公用語である仏語ではどのように表現されているのか気になったので、上に引用したハーパー首相のクリスマス・メッセージの仏語版を調べてみました。
« Chers amis, alors que les Canadiens et Canadiennes d’un océan à l’autre se préparent à cette période de réjouissances, je tiens à vous souhaiter, à vous ainsi qu’à vos proches, de joyeuses fêtes, un très joyeux Noël, un joyeux Hanoukka et une nouvelle année prospère. » 
http://www.pm.gc.ca/fra/nouvelles/2013/12/25/voeux-du-premier-ministre-loccasion-de-noel
英語の"from coast to coast to coast"に相当する部分は"d’un océan à l’autre"(from one ocean to the other)であり、英語で追加された"to coast"は仏語には反映されていないようでした。

Sunday, December 8, 2013

今週気になったニュース

今週カナダに関して個人的に注目したニュースを備忘録としてまとめます。

まずは、引続き上院スキャンダルについて。マイク・ダフィ上院議員とナイジェル・ライト前首相首席補佐官の間の個人的な金銭授受の問題に収まらず、日増しに関係する人物が増えてきて、全容をつかむのが難しくなりつつあります。この問題のキーパーソンとして、アーヴィング・ガーステイン上院議員やデロイト社のMichael Runia氏らが含まれているようです。
http://www.cbc.ca/news/politics/mike-duffy-audit-senate-kills-attempt-to-call-deloitte-executive-1.2450747

次いで、カナダ軍でアフガニスタンで従事した退役軍人の自殺が相次いでいる件。1週間で4名の自殺者が出たことが波紋を呼んでいます。4人全てがPTSDを患っていたかどうかははっきりしていませんが、メンタルヘルス対策が十分に行われているのか否かも争点となっています。
http://www.cbc.ca/news/politics/military-health-system-questioned-after-soldiers-deaths-1.2450708

その他には、政党における党首との関係で国会議員により多くの権限を与えようとするMichael Chong下院議員(保守党)の個人議員法案が気になっています。
http://www.ctvnews.ca/politics/private-member-s-bill-will-restore-canadians-faith-in-their-parliament-1.1571572

Sunday, December 1, 2013

NHK連続テレビ小説「花子とアン」

2014年4月に始まる、「赤毛のアン」翻訳者・村岡花子の半生を描くNHK連続テレビ小説「花子とアン」が、カナダのCBCで取り上げられていました。

"Japan airing 156-part series on Green Gables translator"
http://www.cbc.ca/news/canada/prince-edward-island/japan-airing-156-part-series-on-green-gables-translator-1.2445954

記事は、赤毛のアン(Anne of Green Gables)の舞台となったカナダのプリンスエドワードアイランド(PEI)州の観光戦略プランに触れたもので、その観光客誘致の大きな要因として、日本におけるこの朝ドラの放送に期待するところが大きいという内容です。

ちなみに、記事中にもありますが、2014年はカナダの連邦結成に向けて重要なステップとなった1864年のシャーロットタウン会議から150周年にあたります。

Saturday, November 30, 2013

今週話題になっていたこと

今週カナダ政治に関して話題になったこと。

2週間ほど前までは連日取り上げられていたロブ・フォード・トロント市長のコカイン服用の件はあまりニュースで見なかった一方、マイク・ダフィ上院議員に対してナイジェル・ライト前首相首席補佐官が90,000ドルの資金を提供していた案件は、次々に新たな情報が出てきて、野党やメディアからの追及が激しくなっているように感じました。肝は、金銭のやり取りを当事者以外の誰が認識していたのか、ハーパー首相も実は知っていたのではないか、という点にあるようです。

その他には、RCMPの警官が業務時間内に(赤い制服を着用した状態で)医療用マリファナを服用していたことが発覚したり、2010年トロントで行われたG20サミットの際に米国の情報機関がカナダで諜報活動をしていたこと、そしてその行為をカナダ政府が黙認していたらしいことなどが報じられました。
また、カナダ政府がロンドンでカナダ大使館として使っている建物をインドのディベロパーに売却したとのニュースもありました。
http://www.cbc.ca/news/canada-sells-london-diplomatic-mansion-for-530m-1.2444294

Thursday, November 21, 2013

VIA鉄道格安チケットの買い方

カナダで営業している旅客鉄道のひとつにVIA鉄道(VIA Rail)があります。カナダ全土、西から東、そして北はハドソン湾まで広くネットワークを張り巡らせている国営の旅客鉄道会社(いわゆるCrown Corporation)です。お隣のアメリカにはアムトラック(Amtrak)がありますが、それのカナダ版といったところです。

今回は、このVIA鉄道のチケットを格安で買えるウェブサイトを紹介します。

Via Express deals
http://www.viarail.ca/en/deals

日によっては格安チケットの設定がない場合もありますし、必ずしも希望するグレードの座席がないこともありますが、日程さえ都合がつくのであれば相当な割引率でチケットを購入できるのが魅力です。

下の画像は、11月17日時点のバンクーバー発トロント行きチケットの検索結果です。半額に近い料金設定となっているのがわかります。たとえば、食事なしのエコノミークラス席は、元々C$591だったものが割引されてC$315.20、食事・シャワー・展望車両へのアクセス付の寝台(2段寝台の上段)はC$1023がC$545.60まで値引きされています。大陸を横断する4泊5日の長旅であることを考えればとてもお得なチケットです。

最後に、数年前、実際にこのサイトで格安チケットを買ってバンクーバーからトロントまで乗車し、大陸横断鉄道旅行をしたときの写真を何枚か紹介します。














































Saturday, November 16, 2013

ヌナヴト準州議会総選挙

おそらく日本では誰も書くことのないだろう話題だと思いますが、カナダ首相府(PMO)メーリングリストから11月15日付で"Statement by the Prime Minister of Canada on the results of the election in Nunavut"というメールが届いていたので取り上げます。

現在カナダは10州及び3準州によって構成されており、3つある準州の1つがヌナヴト(Nunavut)です。ヌナブトは1999年4月1日に北西準州から分割される形で創設されたもっとも新しい準州で、人口は約32,000人、準州都はイカルイト(Iqaluit)、人口の6割強をイヌイットが占めています。

そのヌナヴトで10月28日(月)、準州創設後4度目となる総選挙が実施されました。定数は22議席(前回選挙から3議席増)。解散時に準州首相だったEva Aariakも立候補しましたが、あえなく落選。

ヌナヴトが他の州・準州と大きく異なるのは、同準州の政治は政党政治に基づかず、選挙においては全ての候補が無所属として立候補する点。選挙後の最初の議会において、議長(Speaker)、準州首相(Premier)、閣僚等が選出されます。今回の選挙後の最初の議会は11月15日に開かれ、Peter Taputunaが準州首相に選ばれました。

(参考)
ヌナヴト準州議会ウェブサイト

Friday, November 8, 2013

ブログ開始にあたって

カナダ関連の話題を日本語で読めるブログが少ないので、それなら自分の備忘録を兼ねてブログを書いてみようと思ったのがきっかけです。